『 3名の栄養士が語る、変化する現場と次の20年への想い 』
メディケア食品の発売から20年。この間、介護食を取り巻く環境は大きく変化してきました。
今回、現場で日々介護食と向き合う3名の栄養士の先生をお招きし、介護食生産工場の見学と座談会を開催。
介護食づくりのリアルな課題、メディケア食品への率直な評価、そして次の20年への期待について語っていただきました。
〈第一部〉日常の課題と工夫の共有
【それぞれの介護食の「はじまり」】
〇栗野先生の転機
入職3年目、先輩が退職して一人になった時、初めて栄養ケアラウンドで利用者様の食事風景を目にした栗野先生。
それまでは厨房で一生懸命作るものの、実際に利用者様が召し上がる場面を見る機会がほとんどありませんでした。
栗野先生: 「ミールラウンドで食事風景を見た時に、自分が作っている食事と食べているところがリンクして…
『もっとこうしなければ』と強く感じたんです。それでネットで色々調べて、メディケア食品を知りました」

栗野 祐衣 先生
【施設形態】特別養護老人ホーム
現在は、調理レクや介護職員との協働に力を入れている。
『1人職場が多い栄養士さん達が横の繋がりで楽しく自分らしく働くことで、高齢者を幸せに』と
日々、Instagramで情報発信もされている。
栗野先生のInstagram:@eiyoushi_kurinoyui
〇関先生の転機
関先生が嚥下調整食に取り組み始めたのは2006年。その背景には、2000年の介護保険制度導入がありました。
関先生: 「2000年の介護保険導入で、患者様やご家族の選択肢が広がりました。『選ばれる施設になるには何が必要か』を考えるようになり、食事の質、特に嚥下調整食の充実が大きなテーマになりました」
当時、関先生が最も悩んだのが「魚の繊維」でした。
関先生: 「いくらミキサーにかけても、口の中に繊維が残ってしまいました。魚種は維質の少ないアブラカレイなどを選んでいましたが、やはり繊維が残ってしまい、それが誤嚥のきっかけになる恐れもあり早急な対応が求められました」
増粘剤を使い、温度管理に気を配り、何度も試作を重ねる日々。しかし、手作りでは難しい点が多々ありました。人によって加減が変わり、食材の時期によって水分量が変わる。物性がなかなか安定しない。—そんな悩みを抱えながら試行錯誤を続けていたそうです。転機が訪れたのは、嚥下食のコンテストに出場し、審査員の先生のアドバイスや、他の施設の取り組みを知ってからでした。
関先生: 「作る手間と光熱費を全部ひっくるめて考えたら、案外既製品の方が安いことに気づいたんです。しかも物性も安定していて、彩りもいい」
そこから徐々に既製品を取り入れ、今では手作りと既製品を組み合わせながら、質の高い嚥下調整食を提供しています。

関 千枝 先生
【施設形態】病院
2000年の介護保険導入を機に嚥下調整食に本格着手。
手作りと既製品をうまく組み合わせたメニューをinstagramで発信。
患者様の笑顔のため、見た目にも楽しい嚥下調整食に日々挑戦されている。
関先生のInstagram:@chie.mhp
〇山口先生の転機
山口先生の病院で嚥下調整食が始まったのは10年前。当時の院長先生の「ミキサー食も、形があるほうがいいんじゃないか」という一言がきっかけでした。
最初はゲル化剤を使用し、試作を繰り返し行っていました。しかし試作する中でゲル化剤だと調整が難しく、毎回物性が違うという悩みがありました。その後、既製品を使った嚥下調整食が本格化しました。しかし、最初に提供した時、想定外のことが起きます。
山口先生: 「ソフト食のお寿司を作った時、写真撮って『これは患者さん喜ぶね!』ってみんなで満足していたんです。でも実際出してみたら、食べにくかったんですよ。平皿だとスプーンですくいにくくて。いつも茶碗でおかゆ食べている方には難しかったんですよね。自分たちの自己満足じゃダメなんだって、そこで気づきました」
これが山口先生にとっての大きな転機でした。その後、言語聴覚士と連携しながら試食を繰り返し、「前回これで大丈夫でした」という記録を積み重ねることで、自分たちの基準を作っていきました。
今では、手作りと既製品を組み合わせながら、イベント時を中心に既製品を活用されています。

山口 育恵 先生
【施設形態】病院
当時の院長先生の「ミキサー食も、形があるほうがいいんじゃないか」という一言がきっかけで嚥下調整食を開始。
現在はイベント時を中心に既製品を活用。
多職種を巻き込みながら、ご利用者が楽しみになる食事の提供に力を入れられている。
山口先生のInstagram:@kokohopi_sofuto
【既製品介護食の導入による変化】
メディケア食品も活用してくださっている3名の先生方。
実際にお食事を提供した際の反応も伺いました。
栗野先生: 「最初に出した時、介護職員さんたちの声かけが変わったんですよ。『今日のメニュー何だったっけ』って見て、『これ人参かな』って確認しながら、利用者様に紹介してくれるようになって」
関先生: 「わかります。彩りがしっかりしていると、何を食べているか分かりますからね」
栗野先生: 「そうなんです!見てわかりやすいから、介護職員も説明しやすいし、それが入居者様にも伝わったんだと思います」
関先生: 「味もしっかりしているから、患者様も感じられますよね」

▲栗野先生のご施設でご提供のデザート ▲関先生の病院でご提供のおせち
▲山口先生の病院でご提供のメニュー
【人手不足という現実】
しかし、現場には深刻な課題も。3名が口を揃えたのが「人手不足」でした。
山口先生: 「今、一番の悩みは人手不足で…調理師さんが中々集まらないんです」
栗野先生: 「うちもです」
さらに栗野先生の施設では、大きな変化を経験しました。
栗野先生: 「うちは直営からクックチルに変わって、厨房職員はパートさんのみ、日勤帯のみになりました。管理栄養士1人とパート3人の計4人だけ。一から手作りでの介護食は、技術的にも時間的にも厳しくて」
関先生も同じ課題を抱えています。
関先生: 「うちの場合も厨房職員が安定していないです。直営のクックサーブ調理が減って、委託業者も撤退が増えています。誰でも簡単に作業できる環境を整える必要があるなと感じています」
栗野先生の施設では、労働環境の見直しから「9時〜17時勤務」に統一されました。早番がなくなったことで、調理職員は確保しやすくなったものの、介護食づくりには制約も。
栗野先生: 「一から作るとなると、9時から仕込んで12時の提供には間に合わない。それに、特養ではナースが日勤帯のみなので、ナースが食べ終わるまでいられる時間帯じゃないと危ない、夕食に手作りは難しいんです」
こうした環境の中で、「誰が作っても安全で、一定の品質が保てる」既製品の価値が高まっています。

企画・取材:Umios株式会社(旧 マルハニチロ株式会社)
2025年11月実施
次のコラム:〈第二部〉見て、食べて、感じたこと【いざ、介護食製造工場へ!】












